C h a p t e r 1   あり方が見つからないとき

守られた立場、と気づいた瞬間

経営者の孤独に気づいた日

=あり方の種がまかれた時期=

銀行を辞めたあと、私は地元の会計事務所に転職しました。 ここでの10年間は、まさに“経営のリアル”に触れる日々でした。

顧問先は中小企業の経営者。

法人の決算や資金繰り、税務など、日々の数字を整える仕事をしていく中で、 たくさんの社長と出会い、たくさんの“お困りごと”を聞くことになりました。

最初は、「会計を整えることが役割」だと思っていた私。 でも次第に、その考えでは到底足りないと気づき始めたのです。

「資金繰りが苦しい」

「社員との関係がうまくいかない」

「どこに向かっていいか分からない」

数字の向こうに、感情や不安、葛藤を抱えた“人”としての社長の姿が見えてきたのです。

そして、気づきました。 自分は「守られた立場」だったということに。

サラリーマンとして、毎月決まった給料が入り、 守られている環境で働いていた私と、 誰にも相談できず、社員や家族の人生を背負って経営している社長とでは、 立っているステージがまったく違ったのです。

「本当は、もっと力になりたい。けれど、今の自分では限界がある」

──そう思うようになっていきました。

経営者の言葉に頷くだけでなく、 “本当の意味で寄り添える存在になりたい”

でもそのためには、自分も責任ある立場に身を置かなければならない。

その思いが、私の中で次第に強くなっていきました。

この10年で感じた、「経営者の気持ちが本当にわかるコンサルタントになりたい」 という思いこそが、のちの独立、そして“あり方”を軸にした支援につながっていくことになります。

この時期こそ、私の“あり方の種”がまかれた、大切な時間でした。